書籍紹介:『裁判所の正体ー法服を着た役人たちー』
著者:瀬木比呂志
現役の裁判官を長く務めた瀬木比呂志氏がその経験をもとに描いた『裁判所の正体ー法服を着た役人たちー』は、日本の裁判所制度の内情を辛辣かつ皮肉を込めて暴露した一冊です。
本書は、裁判官のあり方やその考え方、そして裁判所の実態について、多くの人が見過ごしがちな問題点を浮き彫りにします。
裁判官の「一般教養の欠如」
本書では、裁判官の多くが一般教養に乏しいという指摘がなされています。
これは彼らの育成過程が「法の知識」を詰め込むことに特化し、広い視野や多様な価値観を養う教育を軽視しているからです。
その結果、裁判官の判断がしばしば一般市民の感覚とは大きくかけ離れたものとなることがあります。
たとえば、本書の中で瀬木氏は、「法廷の中での裁判官の言葉が、一般の社会常識からどれだけ遠いか」というエピソードを挙げています。
法服の裏側に隠れた「役人」マインド
裁判官は「公平中立なジャッジ」であるべきというイメージが一般的ですが、瀬木氏はこれに異を唱えます。
裁判官は法服をまといながらも、実態は「役人」であり、出世や組織の論理に縛られた存在であると語られています。
このような体質は、裁判が形式的で硬直的な運営となる一因であり、時には被害者や弱者が泣き寝入りする結果を招くとも指摘されています。
皮肉を込めた視点での読みどころ
瀬木氏の筆致は皮肉に満ちています。
たとえば、裁判官たちが「現実の人間の感情や社会的な背景を理解しないまま、純粋な法理論だけで判断する姿勢」を鋭く批判し、これがいかに社会の歪みを生むかを痛烈に描いています。
読者としては、この皮肉に満ちた描写を通じて、「裁判官も万能ではない」という現実を改めて認識させられることでしょう。
本書が与えるインパクト
『裁判所の正体』は、単なる司法批判にとどまりません。
むしろ、日本の裁判制度全体が抱える課題について、私たち市民が何を知り、どう向き合うべきかを考えさせられる内容です。
裁判所という権威に疑問を投げかけ、その透明性や責任を求める契機となる一冊です。
おわりに
瀬木比呂志氏の『裁判所の正体ー法服を着た役人たちー』は、裁判官や司法制度への盲信を一度立ち止まって考え直すきっかけを与えてくれます。
皮肉に満ちた語り口がこの本を読みやすくしつつも、その内容の重さを決して軽くすることはありません。
この本を通じて、裁判所の「正体」を知り、その改善に向けて何ができるかを一緒に考えてみてはいかがでしょうか?
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