【地方創生の闇】人口8000人の町に救急車12台!?『過疎ビジネス』が暴いた「合法マネーロンダリング」の手口

地方創生、官民連携、地方への企業誘致……。

ニュースでよく耳にするこうした美しい言葉の裏で、過疎に悩む自治体の「公金(税金)」を食い物にする信じられないようなビジネスが横行しているのをご存知でしょうか。

今回は、河北新報の記者・横山勲氏による渾身のルポルタージュ『過疎ビジネス』をご紹介します。

異常すぎる!人口8000人の町が「救急車12台」を購入

本書のハイライトであり、最も不可解な事件の舞台となったのが、福島県国見町です。

人口わずか8000人ほどのこの町に、ある日、最新の高規格救急車を「12台」も購入するという不可解な事業計画が持ち上がりました。

単純計算で町民約660人に1台の救急車。

普通の洋介
普通の洋介

これを持ち掛けること自体が異常で何か裏がありそうな予感がしますよね。

しかも、この町は広域消防組合に加入しており、町内に自前の消防署すら持っていません。

「じゃあ、そんなに大量の救急車をどうするの?」

なんと、「他の自治体に貸し出す(リースする)ビジネスを始める」というのです。

特殊車両のノウハウなど一切ない過疎の町役場が、突然救急車のリース業者になる。

どう考えても理屈が通りません。

実はこの裏には、あるコンサルタント企業が仕掛けた「悪魔のスキーム」が隠されていました。

たった4000万円の負担で「4億円の売上」を作るスキーム

このリース事業の原資(元手)となったのは、某大手企業グループからの4億円にも上る「企業版ふるさと納税(寄付金)」でした。

このスキームの恐ろしいカラクリは以下の通りです。

  1. 実質負担は1割:企業版ふるさと納税は、寄付額の最大9割が税額控除されます。つまり、企業が4億円を寄付しても、実際の持ち出し(負担額)は約4000万円で済みます。
  2. デキレースの入札:コンサルタントが町役場に入り込み、「特定の企業しか落札できないようなガチガチの仕様書」を作成し、入札を行います。
  3. 自社グループで受注:その結果、4億円分の救急車を受注したのは、なんと「寄付をした大手企業グループの子会社」でした。

お分かりでしょうか? 実質4000万円の負担で町に寄付をすれば、それがそっくりそのまま「自社グループの4億円の売上」として返ってくるのです。

コンサルタント本人が流出した音声で「超絶いいマネーロンダリングだ」と豪語していた通り、合法的に税金を自社の利益に変換する、極めて巧妙で悪質な手口です。

補助金や助成金を狙う「制度ハック」の罠

こうした国の制度を悪用する企業の手口は、なにも企業版ふるさと納税に限った話ではありません。

例えば、若者の雇用を促進するための「新卒者就職応援プロジェクト」のような行政の助成金制度でも、似たような構図が見られます。

※注:新卒者就職応援プロジェクトとは 未就職のまま卒業した若者を企業が一定期間雇用し、働きながら正社員化を目指す国の支援制度。

表向きは若者の就職支援を謳いながら、実際には対象者を正社員として雇う気など毛頭なく、国からの補助金を吸い上げて、意欲ある若者を使い捨てにする企業も存在していたそうです。

第1~2期合計で「参加希望者約3万人に対し、就職者数5,862人、就職率約40.9%」という数字が示されており成功とは言えない結果でした。

本来は「地方を元気にするため」「若者を支援するため」に作られた善意の制度が、モラルのない企業によって単なる「自社の利益最大化ツール」としてハックされてしまっているのが現代のリアルです。

なぜ、誰も止められなかったのか?

この異常な救急車12台の計画を、なぜ町長や議会は止められなかったのでしょうか?

その背景には、人手不足で疲弊しきった地方役場の現状と、「地方議員なんて雑魚だから言うことを聞く」と見下すコンサルタントの存在があります。

さらに深刻なのは、地方メディアの衰退による「ニュース砂漠化」です。

監視の目が届かない地方の小さな町だからこそ、「どうせ誰も気づかないだろう」と高を括られ、格好のターゲット(実験場)にされてしまったのです。

脅しに屈しない勇気。これこそが本来の「ジャーナリズム」ではないか

最後に、私がこの本を通じて最も胸を打たれた、ある「舞台裏」のエピソードについて触れておきたいと思います。

この信じられない「過疎ビジネス」の闇を河北新報の朝刊でスッパ抜いた後、横山記者には東京の有名弁護士事務所から「法的措置をとる(訴えてやる)」という内容の脅しの通知書が届いたそうです。

普通であれば、ここで会社側が及び腰になり「これ以上の追及はやめておこう」とストップがかかってもおかしくありません。

しかし、当時の河北新報福島総局長であった本田秀行氏は違いました。

脅しに怯むどころか、「気にするなどんどんやれ」と横山記者の背中を強く押したのです。

大きな資本からの圧力や、法的措置という脅し。

それに決して屈することなく、泥臭い取材で掴んだ「真実」を世の中に問う。

この横山記者と本田総局長の勇気ある姿勢に、私は「これこそが本来のメディアのあるべき姿であり、本物のジャーナリズムではないか」と深く感動しました。

普通の洋介
普通の洋介

この横山記者と本田総局長の勇気ある姿勢に、私は「これこそが本来のメディアのあるべき姿であり、本物のジャーナリズムではないか」と深く感動しました。

スポンサーへの忖度や、当たり障りのないニュースばかりが溢れ、地方の「ニュース砂漠化」が進む現代。

真実を歪めず、脅しにも屈しない。

そんな気骨あるメディアの存在が、今ほど求められている時代はないのではないでしょうか。

皆さんは、この事件を通じて「本当のメディアのあり方」とは何だと感じましたか?

ぜひ、皆さんのご意見もコメント欄で聞かせてください。

まとめ:地方の寂れ方は自分たちで決める

本書の後半で、ある地方の住民が語った言葉が非常に印象的です。

「過疎が進むのは仕方ない。でも、寂れ方(さびれかた)は自分たちで考えたい」

都会からやってきたコンサルタントに丸投げし、よく分からないキラキラした事業で公金を吸い取られるのではなく、自分たちの町の現実と向き合い、どう生きていくかを住民自身が決めること。

それこそが、本来の「地方創生」のあるべき姿だと痛感させられます。

地方自治の危機と、それに立ち向かう気骨ある記者の戦いを描いた『過疎ビジネス』。

税金がどう使われているのか、私たちの社会の裏側を知るために、ぜひ一度手に取って読んでみてください。

参考動画

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